コンテンツへスキップ

研究紹介

本研究室は,新しい情報学の先端研究を推進することを目的とし,2015年9月に設置されました.当研究室では,ソーシャル・コンピューティング,Web工学,人工知能,機械学習,自然言語処理といった情報技術を用いて,医療,社会分析など幅広い分野に社会実装を行っています.これまでの本研究室の活動についてご興味がある方は,研究室年報をご覧ください.

医療ビッグデータ+情報処理

もっともAIの成果が期待されているのが医療AIです.電子カルテテキストなど大量の臨床データの大規模解析技術を研究し,医学研究を推進しています. 例えば,次のようなテーマをこれまで扱ってきました.

総合診療(プライマリケア)を支援する症例検索システム(医師用診断支援システム;AMED研究による):日本内科学会の症例報告を利用し,診断支援を行う研究を行いました.

患者の医師のコミュニケーションを支えるプラットフォーム(内閣府SIP-AIホスピタルプロジェクトによる):患者の発話を医療に有効利用するため,患者表現を理解する言語処理システムを研究開発しています.

肺がん症例類似症例検索システム(AIP-PRISM; 国立がんセンター共同研究):病名,部位,時間関係など深い言語処理解析を導入して,臨床的に妥当な観点で類似した症例を検索するシステムを研究開発しています.

大規模病名辞書の構築(厚労科研荒牧班):本邦最大規模の30万病名を超える辞書を開発し,公開しています.

患者の自主報告を診療に活かす患者一行日記アプリ開発(京都大学,関西医科大学共同研究):スマートフォンアプリを用いて,患者発信のデータを診断に活かす研究をしています.

Twitterなどのソーシャルメディアからの医薬品有害事象のシグナル検出(富士ゼロックス共同研究):ウェブ上のさまざまな情報を用いて,医薬品のコンプライアンス,有害事象など医療者,製薬サイドにとって有用な情報を抽出しています.

それぞれ,本邦を代表するステークホルダーと迫力のある規模で研究を推進しています.

ソーシャルメディア・Webデータで豊かな生活を

感染症の流行は,毎年,百万人を越える患者を出しており,常に重要な国家的課題となっています.本研究室では,ソーシャルメディア(Twitter など)やWeb上のビッグデータを用いて,人々の健康情報をモニタリングすることにより,COVID-19, インフルエンザ,花粉症などの疫学情報の抽出を行っています.

さらに,健康情報に限らず,ソーシャルメディアやWeb上のビッグデータを活用した,様々な研究を行っています.詳しくは論文発表を御覧ください.

  • ライブストリーミング配信テキストにおける暴言の特定と分類
  • テキストからの画像生成技術を用いた新しい応用(医療応用;コーネル大共同研究)(音楽配信への応用;仏Deezer社共同研究)
  • SNSにおける名誉毀損発言の解析
  • Twitterを用いた街の雰囲気情報の抽出
  • 家族介護者の悩みの解析

言葉で疾患・障害をサポート

世界に類をみない超高齢化社会を迎える本邦にとって,医療の問題は医療者の問題だけでなく,いかに患者,当事者のパワーを治療に活かすかにかかっています.ICTで患者,当事者をエンパワーし,癒やしを支援しています.これまで,以下の研究を推進してきました.

認知症の超早期診断(京都大学,大阪国際がんセンター共同研究):患者の語り(文章や発話内容)から疾患の進行を予測や,感情を分類,悩みの分類,近い状態にある患者や介護者の推薦など様々なサポートを実現する研究を行っています.

がん患者のピアサポートの場の形成(乳がん患者団体CANSOLとの共同研究):本研究室が共同運営するエピソードバンクとソーシャルネットワークサービスを用いて,がん患者さん同士が交流し,サポートする研究を行っています.

当事者研究(東京大学共同研究):東京大学当事者研究室(熊谷晋一郎研究室)との共同研究で,当事者のエピソードをバンク化し,アーカイブ化する試みを行っています.

異分野との協働:個人と場のWell-beingを計測

個人と集団(場)のwell-beingの両方を満たしたい.この大きな課題に挑むため,社会心理学,都市デザインなどの異分野の研究者と共同研究しています.我々は,多様な個人の最適化は,その基盤となっている「場」によって支えられるという立場をとっています.そのため,「場」の状態を計測する技術を開発し,それを個人にフィードバックする新しい社会のあり方を研究しています.

※ 本研究は,「個人の最適化を支える「場の状態」:個と場の共創的Well-beingへ」研究課題(代表:京都大学・内田由紀子教授)として推進しています.